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ライツアウトの数理,野球の統計学(4年ゼミ)



一人目,ライツアウトの数理.
今回は三重対角行列 T_d の固有多項式を考える.
 \mathbb{F}_2 での話なので符号を機にする必要がないことに注意すれば,固有多項式  \Phi_d(\lambda)=\det(T_d+\lambda E_d) の計算は,Lights Out行列 A{\rm rank} を求めた方法と全く同じである.
つまり,行列 B において,T_d\to \lambda+1,\ E_d\to 1 と置き換えてやれば,
 \Phi_d(\lambda)=p_d(\lambda+1)
と求められる.また,このときに行った行基本変形の結果,対角線上に 1 が  d-1 個,p_d(\lambda+1) が1個並ぶので,各固有値 \lambda=\alpha_k ごとに,
\dim(\ker(T_d+\lambda E_d))=1
となることが分かる.すなわち,各固有値に対する固有空間の次元は1だと分かる.

ところで, \mathbb{F}_2係数のFibonacci多項式 p_n(t) は, \nu_0(t)=\nu_1(t)=1 および漸化式
 \nu_{k+2}(t)=\begin{cases}
\nu_{k+1}(t)+\nu_k(t),&\text{ $k$が奇数のとき,}\\
t\nu_{k+1}(t)+\nu_k(t),&\text{ $k$が偶数のとき,}
\end{cases}
によって定められる多項式 \nu_k(t) を用いて,
 p_{k}(t)=\begin{cases}
t(\nu_k(t))^2,&\text{ $k$が奇数のとき,}\\
(\nu_k(t))^2,&\text{ $k$が偶数のとき}
\end{cases}
と表されることが示される.更に,\nu_k(t)=0 \mathbb{F}_2 の閉包において重解を持たず,分離的であることも示される.したがって偶数 k=2d の場合, p_{2d}(t)=0 のすべての解は2重解のみであり,\Phi_{2d}(\lambda)=p_{2d}(\lambda+1)=0 の解である T_{2d} の固有値も全て2重解のみとなる.
一方,各固有値の固有空間は1次元だったことと合わせると,T_{2d} のJordan標準形は2次ブロックだけの直和に分解され,
 T_{2d}\sim J(\alpha_1,2)\oplus\cdots \oplus J(\alpha_d,2)
となることが分かる.

さて以前示したように, \mathbb{F}_2 での特有な現象として  2^b\ge d ならば
J(\alpha,d)^{2^b}=\alpha^{2^b}E_d
となったのであった.すると
 T^2_{2d}\sim \alpha_1^2E_2\oplus\cdots \oplus\alpha_d^2E_2
となり,つまり,
 \begin{align}
p_{2d}(T_{2d})&=\nu_{2d}(T_{2d})^2=\nu_{2d}(T_{2d}^2)\sim \nu_{2d}(\alpha_1^2)E_2\oplus\cdots\oplus\nu_{2d}(\alpha_d^2)E_2\\
&\sim p_{2d}(\alpha_1)E_2\oplus\cdots\oplus p_{2d}(\alpha_d)E_2
\end{align}
といった対角行列に相似になる.となると,
{\rm rank}(p_{2d}(T_{2d}))=2d-2\#\{\alpha_k\mid p_{2d}(\alpha_k)=0\}
ということになるが,もともと \alpha_k は固有値,すなわち \Phi_{2d}(\lambda)=p_{2d}(\lambda+1)=0 の解でもあったから結局,
\begin{align}
{\rm rank}(p_{2d}(T_{2d}))&=2d-2\#\{\alpha\mid p_{2d}(\alpha)=p_{2d}(\alpha+1)=0\}\\
&=2d-\deg({\rm GCD}(p_{2d}(t),p_{2d}(t+1)))
\end{align}
ということになる.こうして,まず n=2d のLights Out行列 A{\rm rank}(A) が決定できた.
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二人目,野球の統計学的な何か.
こちらも5/16以来のゼミとなり,5ヶ月以上が過ぎてしまった.
しかも,自分でなにか進めていてくれたわけでもなく,手遅れに近い.
今流行のセイバーメトリクス的な何かをしようとしているようだが,何しろ問題意識が定まっていない.
この状態は,本来9月上旬であるべきで,50日ほど間に合っていない計算になる.さてどうするかね.